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佐藤の存在を知ったのは、大学3年の頃。
夏のインターンシップの5日間の間、
俺が配属になったのは、企画開発部だった。
そこにいたのが佐藤の彼氏であった、阿部だ。
たまたまゼミでお世話になった大学の先輩がいたせいか、
阿部というオトコとも一度だけ飲みに行く機会があった。
阿部は、可愛い大学生の年下の彼女と付き合っていて、
総務部にてインターンシップを受けているんだと、
酔った勢いで口を滑らせた。
結婚まで秒読みなんだぁと、誇らしげに語り、
一緒に撮ったプリクラやら、
ケータイの待ち受けを見せられた。
大学時代の佐藤は、
頬に丸いピンクのチークを入れて、髪もアッシュブラウンに染めていた。
コテで巻いた髪は、何処か背伸びをしている印象を持ったが、
まあまあ可愛い部類ではあったので、
「可愛い彼女ですね」と、率直な意見を告げた。
それから翌年の5月に、この会社の内定を貰い、
大学卒業の時には、すっかりそんな話など忘れていた。
久々にあった先輩が、俺のことを覚えてるだろ? と阿部に尋ねたが、
阿部というオトコは、すっかり俺に話したことも、名前さえ忘れていた。
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