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気づいたのは、ほんの偶然。
時折、皆元さんが先に退社した後、
佐藤は、一人でお茶を飲みながら
デスクに居ることが暫しばあった。
「なにしてんの?」
と、尋ねると決まって、
「お茶してるの」と答える。
「そ、じゃあお先に」
俺がプレートを赤に変えると、
「うん、御疲れーー」
と、佐藤はいつも通りの笑顔で答えて、馬鹿みたいに手を振って見送った。
その日、
たまたま家に帰って
明日朝一番にあるプレゼンの資料チェックをしている時に、
大事なファイルを会社に忘れたことを思い出して、深夜、会社へと戻った。
家から会社までの距離は、
歩いても20分、
ダッシュなら7分弱でつく。
風呂上りのジャージ姿のまま、会社のロビーに着く。
警備員に深夜の入室者台帳に名前の記載をして、
社員カードを使ってゲートをくぐり、無人のエレベーターへと乗り込んだ。
8階の第二営業部に辿り着く迄に、誰にも会うことは無かった。
もう深夜1時過ぎで、
そんな時間に会社に来ること自体、間違ってる気がする。
だが、コピー機が呻る音を聴いて、胸騒ぎがした。
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