kiss19 -笑顔の仮面-前半

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気づいたのは、ほんの偶然。 時折、皆元さんが先に退社した後、 佐藤は、一人でお茶を飲みながら デスクに居ることが暫しばあった。 「なにしてんの?」 と、尋ねると決まって、 「お茶してるの」と答える。 「そ、じゃあお先に」 俺がプレートを赤に変えると、 「うん、御疲れーー」 と、佐藤はいつも通りの笑顔で答えて、馬鹿みたいに手を振って見送った。 その日、 たまたま家に帰って 明日朝一番にあるプレゼンの資料チェックをしている時に、 大事なファイルを会社に忘れたことを思い出して、深夜、会社へと戻った。 家から会社までの距離は、 歩いても20分、 ダッシュなら7分弱でつく。 風呂上りのジャージ姿のまま、会社のロビーに着く。 警備員に深夜の入室者台帳に名前の記載をして、 社員カードを使ってゲートをくぐり、無人のエレベーターへと乗り込んだ。 8階の第二営業部に辿り着く迄に、誰にも会うことは無かった。 もう深夜1時過ぎで、 そんな時間に会社に来ること自体、間違ってる気がする。 だが、コピー機が呻る音を聴いて、胸騒ぎがした。
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