ラストkiss

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唸り声を上げる熱風が、 俺と佐藤を撫でて通り過ぎていった。 空高く消え去った、 両翼の鉄の塊になんか負けないほど、 俺の心は固く決まっていて、 この先も揺るがない想いで、こいつを愛せる。 俺の言葉は、彼女の胸に届いただろうか。 佐藤の左手をぎゅっと握る。 白く柔らかい手の甲に唇を触れさせた。 この手を、佐藤の全てを俺のものに....…。 「佐藤の未来。俺にくれる?」 真っ直ぐと、俺を見つめたまま、彼女は、小さく頷いた。 「じゃあ、一万回キスしてくれるって約束するんだったら、あげてもいーよ」 口元に笑みを湛えたまま、強気な要求をする。 其の言葉を聞いて、 何故だか胸の奥がじんわりと熱くなり、 強い彼女への想いが込み上げてきた。 佐藤の肩を引き寄せ、 強風で乱れた彼女の髪を優しく撫でる。 「小栗?」 答えを貰えないからか、 佐藤は、少し戸惑った調子で俺の名前を呼ぶ。 彼女の髪から漂う、淡い香りを吸い込み、唇を開いた。 「駄目だよ」 「え!」 佐藤の不安そうな表情を横目で眺めた。 そんな顔も、全て愛おしい。 「一万回じゃ、少な過ぎる。もっと、キス....しよ」 佐藤は、驚いたように俺を見つめた後、 屈託の無い笑顔になり赤く頬を染めた。 俺は徐々に赤らんでいく佐藤の頬を、指先で包み込んだ。 其の指先に佐藤の細い指先が触れる。 俺だけが映る瞳。 「大好き」 はっきりと呟いた彼女の唇に触れる。 柔らかな唇。 永遠の時間があったとしても、味わいつくせない甘い唇。 いつか触れ合うことが出来なくなる其の瞬間まで、 どうか、このままで....。
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