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ー3年後ー
At Hibiya park.
公園の中央に位置する噴水の水飛沫の音が、
ごうごうと鳴り響く中、
私はピンヒールでアスファルトを蹴る。
週末には、ガレージセールが行われ賑わう噴水の周囲だが、
本日は、休憩がてらに訪れた散歩客の姿が在るだけで、
お目当ての人物の姿は、見当たらなかった。
日差しが降り注ぐ中、
新緑が生い茂る日比谷公園の広々とした敷地内を、走り回っている。
夏に差し掛かる陽気の中、
照り付く日差しが体力を徐々に奪っていった。
「ケント君~~」
「ケント~~~~~」
苔むした樹木が深く重なり合い、
シダを生やした公園の奥まで進んだが、
ひっそりとしたままで、
時折起きる葉擦音がカサカサと耳の奥を揺らすだけだ。
「居た? 舞!!」
と、息を切らしながら尋ねたのは、レーナ。
「見当たらない。レーナは? カフェの方とかまで見た?」
「公会堂の周囲もぜーんぶ見た。もうお手上げよ~~」
ゼイゼイと息を切らし、体を流れる大粒の汗をハンカチで拭いながら、レーナが力なく答えた。
既に同じ場所を、私達は3周している。
日比谷公園のすぐ近くに在るホテルでの式の時間は、もう、まもなくだ。
だが、なっちゃんの愛息子ケント君は、隠れんぼ中である。
式が始まるまでの合間に、
ケントくんを散歩に連れ出したなっちゃんだが、
ほんの少し目を放した隙に姿を消したという。
一応、ホテルに戻っていることも視野に入れて、
なっちゃんはホテル捜索、我々は最初に消えた公園の中を探していた。
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