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「違う。
種の話してるの、恋じゃないから」
ムッと唇を尖らせて、レーナは言った。
「種ですね。
.......はいはい、種」
レーナらしくて、笑いがこみ上げた。
私を見て微笑むレーナは、何処か優しくて温かく感じる。
「子供が生まれたら忙しくなるだろうから、
今は、バリバリ働かなくっちゃね!!」
すくりと立ち上がるレーナの手に引かれて、私も立ち上がった。
ピカピカに黒光りする靴をパタパタと鳴らし、
紺の吊りズボンを履いたケント君がやって来た。
「まーー!」
一応、彼の中では、舞と呼んでいるらしい。
しゃがみこんで、
「なーに? ママは?」と尋ねる。
そのまま
「んーーー」と唇を突き出され、小さなリップが私の唇に触れた。
可愛い悪戯をした後、
「きちゅふれ」
と、彼は言ってまたパタパタと、走り去った。
え.......今.........。
「キスフレ、って言ったよね? キスフレって!!」
私が指摘する前にレーナが気づいて驚いた。
いきなりのちびっ子の攻撃に、面食らったままの私。
「舞とケント君、キスフレかぁ、将来楽しみな男子ねぇ~」
と何故か納得した調子で、うんうんとレーナが頷いた。
「最年少のキスフレを作っちゃいました」
驚いたまま立ち上がり、彼とのキスの感想を述べた。
「佐藤さん、飯島」
私を呼ぶ声に振り向いた。
先ほど式場で新郎席側に座っていた成宮さんが、私に笑顔で近づいてきた。
「あら? まだ帰らないの?」
「2次会に参加して欲しいって永澤が煩いからね、君達も出るだろう?」
成宮さんは、私達二人に交互に視線を送った。
「勿論、まだ飲み足りないでしょ? 舞?」とレーナが言ったあと時計を眺めた。
「レーナは、お酒禁止です!」
「あ!! そろそろ、会場のほうに移動したほうがいいかもね、
う!!! ごめん!! チョイ気持ち悪!! 先! 舞行ってて!!」
口を押さえ真っ青な顔で、レーナは猛ダッシュで消えた。
つわり......かな?
「先に行こうか?」と成宮さんが声をかける。
私は見上げて、「はい」と答えた。
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