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「実は、さっき見た」
と、佐藤は、ぼそりと漏らした。
「はぁ? 本当に、言ってんの?」
「うん、マジです」
「し、信じらんねぇーー.....」
呆れるを通り越して、言葉を失った。
だが佐藤は、何故か強気な発言を続ける。
「言っとくけど、メールとか電話とかで告白とかする男子お断りです!
動画ファイルなんて、絶対ありえないっつーの!!」
佐藤は顔を真っ赤に染めて、頬を膨らませ、唇を尖らせた。
「.....う!」
今度は俺が言葉を詰らせる番だった。
「昨夜、言った.......けど....」
佐藤と交わった夜を想い出し、高揚する身体を抑えながら答えた。
「あれは、カウントされません」
と冷たく言い放つ佐藤に、
「なんだそれ!!」
文句をつけようとしたが、
アイツは、俺の顔をじっと見つめたまま、その柔らかな唇をゆっくりと動かした。
「言って欲しい...…」
佐藤が潤んだ瞳で俺を見つめる。
「今も、変わらないのなら....…、小栗の口から聞きたい」
喉の奥が干上がっていた。
手に握る汗は尋常じゃなくて、
すぐ傍で佐藤が見つめる状況に、恐れをなすのは心臓だ。
だからといって、もう逃げる訳には行かない。
ずっと想っていた。
ずっと、ずっと.....、
佐藤への想いを、言葉ではなく与えてきた。
ようやく、届けられる。
「佐藤が、好きだ」
佐藤は、
俺の視線を逸らさずに、瞬きもせずに見つめ返していた。
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