始まりは、踏みつけられたラブレター。

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「え、あ…えっと。あ…りがとうございます」 …そう言って、目の前に突き出された白いハンカチを受け取る。…正直、恥ずかしかった。男なのに泣き顔見られるとか。 振られたばかりでその傷も塞がっていないとゆうのに、この人にまで情けないと思われたら嫌だな。 …そう思って、苦笑する俺の顔をその人が覗き込む。 「…何で泣いてたの?」 「……あ、やっぱそこ聞きますか?」 ………そう言った俺は、乾いた笑みを浮かべた。 少し話すのはためらいがあるけど、見られてしまったのだから仕方ない。 「一年片思いしてた相手に振られちゃって、…女々しいかもしれないけど、諦めきれなくて…」 ………そう言って俯いた俺の顔をその人が覗き込んだ。 「…ふふ、女々しいなんて思わないよ。…私はそんな綺麗な感情さえ持ったことがない」 …そう言ったその人が、あまりにも柔らかく笑うので… …ホッとして、肩に入っていた力が抜けるのを感じた。
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