戸惑いと本音。

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      ……放課後、私は真っ直ぐ駅に行くと南口の正面の壁に寄りかかって曇り空を仰いだ。 …降りそうだ。 灰色雲と、冷たい風。 巻き上がる枯れ葉に、目をつぶる。 「…実範さん、お待たせ」 …後ろからかけられた声に振り返ると、少し息を切らせたゆずる君が立っていた。 「…なんか、俺、遅れてばっかりだね?」 「…たいして待ってないよ?今、来た所」 …そう言って笑む私の顔を… ゆずる君がイタズラっぽく、覗きこむ。 「…で、今日は何処へ連れて行ってくれるの?」 「今日は映画館に行く。ファンタジー系の映画を見る為にね。…王子様の動きを見て勉強して、女の子の扱い方を学ぶのよ、ゆずるくん。…さぁ、行きましょう?」 …そう言って差し出した私の手をゆずる君は躊躇いがちに握った。 歩き始めてすぐ、ポツポツと降り始めた雨がコンクリを濡らし始めた。 …コンクリを水玉模様に変える雫に、思わず溜め息が漏れる。 「あーあ。降ってきちゃったねー」 「あ、ちょっと待って、実範さん」 …鞄を漁っていたゆずる君が、折りたたみ傘を取り出して広げた。 「…どうぞ?」 その姿がまるで、童話に出てくる王子様みたいで… …不覚にも、ドキドキしてしまった。
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