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「じゃあ、…お邪魔します」
…そう言って、傘に入った私がゆずる君の隣に並ぶ。
「…ふふっ、相合い傘だね」
「嫌だった?俺、そうゆうの鈍いから。嫌な時は遠慮なく言ってね」
「…なんで?嫌じゃないよ。濡れなくてラッキー。ありがとう」
「そう、良かった」
…そう言ったゆずる君は、安心したように笑った。
足早に駅に向かう、色とりどりの傘の群れ。
揺らめく水溜まりや木の葉から、こぼれ落ちる雫。
…嫌いだった雨の日。でも、今日はそんなに嫌じゃない。
「……映画。ファンタジーが好きなの?」
「うん。笑わないで聞いてくれる?」
「うん」
「映画にでてくるお姫様のドレスとかね、騎士の服、英国風の家具や食器を見てるのが好きなんだ。
…それに、何処か懐かしい感じがする。…多分、小さな時に読んでもらった絵本を思い出すからかな?」
ゆずる君はそんな私の話を馬鹿にする事なく、頷きながら微笑んて聞いてくれていた。
「…ゆずる君、絵本のお姫様には必ず王子様がいる。…お姫様にも王子様が必要だよ?きっと。」
…そう言った瞬間、私を見ていたゆずる君の瞳が揺れた。
「…大丈夫。私が魔法使いになって、舞踏会に連れて行ってあげる」
…そう言った私に、一瞬キョトンとしたゆずる君は屈託なく笑った。
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