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「……実範さん、それじゃあ俺がシンデレラだよ。…こんなシンデレラ、子供の夢を粉々に壊すから」
…呆れたようなゆずる君の声に、クスクスと笑う。
「大丈夫、大丈夫。今の子、そんなに柔じゃない。…だから、ちゃんと文化祭でお姫様に見初められて来るんだぞ?」
…そう言って。おどけて見せた私に、ゆずる君は笑った。
「……実範さんが魔法使いなら、百人力だ」
……繋いだ手を揺らしながら雨のコンクリの道を並んで歩いて、映画館の前にたどり着いた私達はチケット売り場までたどり着いた。
「えーと、大人2枚下さい」
…そう言った私の脇で、2枚分の料金をゆずる君が差し出したので慌てる。
「ちょっ、悪いよ。私が誘ったのに」
「…実範さんは、俺の先生なんだから授業料だと思って?」
…そう言って悪戯っぽく笑ったゆずる君に、今回は甘えることにする。
「…ありがとう、ゆずる君」
「どういたしまして。…中入ろうか?」
…チケットを切って貰って、中に入った瞬間。…ゆずる君の顔色が変わったのに気付いた。
明らかに、様子がおかしい。
動揺していて、表情も硬い。
……どうしたんだろ?
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