戸惑いと本音。

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  …後ろから二番目の、真ん中の通路から一番遠い端っこに二人並んで座る。 …ちょうど、その時。他のお客さんが周りに座り出して、私達は影になって彼女達の位置から見えづらくなった。 「これで、少しは安心かな」 「…実範さん、気をつかわせちゃってごめんね?」 「……気にしないで?極秘任務を任されたスパイ映画みたいでドキドキして、これはコレで楽しい」 …そう言った私に、ゆずる君はクスクスと笑った。 「…あは、俺も。俺も少しドキドキした」 …そう言って胸に手を当てたゆずる君は、屈託なく笑った。 …その後、上映のブザーが鳴って顔を上げた私達は、気付かなかった。彼女が物凄い形相でコッチを睨んでいた事を… …映画の内容は魔王に連れ去られたお姫様を王子様が助けに行くとゆう王道のラブストーリーだった。 …スクリーンに映し出された映像に飲み込まれそうな迫力。 独特の世界観に、背筋が震える。 …クライマックス。自分を人質にとられ手を出せない王子様を救う為に、自分の身を塔から投げ出したお姫様のシーンでは手に汗を握った。    
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