戸惑いと本音。

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…映画はエンディングをむかえて、スクリーンには出演者の名前が流れ始めていた。 カバンを抱えながら、前例の彼女の姿を確認しようとして、気づく。 ……しまった。いない。 証明がついて、明るさを取り戻した場内。 …キョロキョロと彼女の姿を探す私の頭に影がさした。 見上げた先に、オレンジ色のワンピースが見えて… ………目を逸らす。 ヤバい。 「…ゆずる君も来てたんだね?」 …そう言って、笑った彼女は目ざとかった。 「……此方の方、お姉さん?かしら」 「…あぁ、違います」 …そう言って否定した私の前で、彼女はゆずる君の腕に自分の手を絡める。 「彼ね?私が好きなんですって」 …知ってる。 …彼女が何をしたいのか、理解出来ずに視線をさまよわせる。 「………彼に頼まれてたのよ。…変な女の子に絡まれて困ってるから、今日此処に来て助けて欲しいって。あなた、ゆずる君に関わるの止めてくれる?」 ……心臓が止まるかと思った。 「…っ」 ……ゆずるくんは、そんなこと言う子じゃない。 …けど、本当に迷惑だって思ってたら、どうしよう。 否定して欲しいけど、怖くてゆずる君の顔が見れない。 「分かっ…た」 「実範、…さん?」  
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