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「私。先、帰るね?」
…そう言って、後ろを向くとその場から逃げるように駆け出した。
胸にトゲが刺さったみたいに、痛い。
外はさっきよりも強い雨が降っていて、それが逆に心地よく感じた。
ただ、何かに罰して欲しい気持ちだった。
……そう、いつだったて。お姫様の方が大事に、決まっている。
…駅につくと…
息切れを落ち着けるために足を止め、振り返った。
『…彼あなたに、迷惑してるの』
…彼女の声が誰かの声に重なって、頭がガンガンと痛んだ。
まるで、遠い昔に言われた事があるような。
けれど、なにも思い出せない。
「あーあ、もー」
……腕に張り付いたセーラー服をはがすと、ベンチに腰を下ろした。
「ハンカチ、持ってきちゃったな」
…まるで、シンデレラのガラスの靴みたい。
静かに苦笑すると、私は立ち上がった。
二人が来る前に帰るのが、私の役割だから。
…私は魔女だから、悪役でいい。
「っ、実範さん…」
…後ろから、聞こえるハズのない声が聞こえた気がして振り返る。
「……え?」
胸の中は信じられない気持ちでいっぱいだった。
…そこには、ずぶ濡れになったゆずる君が立っていた。
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