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…そう言った私に、ゆずる君は微妙な顔をした。
「…綾乃さんは俺が好きになった子だけど、一生懸命考えたラブレターを踏みつけたり、実範さんに嘘ついたりする意味を俺は理解出来ない。
……好きだった分、嫌いになっちゃいそうで怖い」
「ゆずる君…」
…下を向いて、悔しそうに唇を噛んだゆずる君の両肩を両手で二回叩く。
「…ゆずる君が好きになった綾乃さんも、ちゃんと、真実だよ?あの人はやりたい放題やるけど、裏表無さそうだもの。…綺麗な思いは濁らせちゃ駄目」
…そう言って笑った私に、ゆずる君は目を見開いてゆっくりと頷いた。
…ゆずるくんを傷つけたく無かった。私にはそんな綺麗な感情は、ないから。
大切にして欲しかったの。綺麗な形のまま…。
「………実範さん、今日は巻きこんでごめんね?…ありがとうね」
「…いいよ。私なんかに遠慮しないでよ」
…そう言って、カバンの中に入っていたカーデガンをゆずる君の肩からかけた。
「…風邪、引かないでね?」
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