プロローグ。

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「え、あ…えっと、あ…りがとうございます」 …目の前に突き出された白いハンカチに目を見開いた彼の慌てっぷりは、…正直かなり可愛かった。 「…何で泣いてたの?」 「……あ、やっぱそこ聞きますか?」 ………そう言った彼は、乾いた笑みを浮かべる。話すのをためらう仕草が、少し可愛い。 「一年片思いしてた相手に振られちゃって、…女々しいかもしれないけど、諦めきれなくて…」 ………そう言って俯いたその人の顔を覗き込む。 「…ふふ、女々しいなんて思わないよ。…私はそんな綺麗な感情さえ持ったことがない」 …小さな頃、読み聞かせられていた物語。…お姫様には、必ず王子様がいる。 憧れはあるけれど、そんな夢中になるほどの感情を抱えた事もないまま、私は去年16になった。
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