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〈ゆずるside〉
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…実範さんを見送って、15分後の電車で帰った俺は、真っ直ぐお風呂場に向かった。
濡れてしまった服を全部洗濯機に入れて、洗濯しながらシャワーを浴びる。
「……疲れた」
…今日の俺は、色々ありすぎて心身ともにくたびれている。
身体と頭を洗い終えて、流すと…
……ゆっくり肩までお風呂に浸かった。
今日の映画館での出来事が頭をよぎる。
…映画館で実範さんに嘘をついた綾乃さんは、実範さんが映画館を飛び出した後、…腕を組んで此方を睨んだ。
『綾乃さん?なんで、嘘ついたりしたの』
…勇気を出して聞いた俺の言葉を、彼女は鼻で笑った。
『…“なんで?”それはコッチのセリフ。なんで、私が振って一週間たたないうちに他の女の子と歩けるの?』
『え?』
『おかげで、友達に私があなたを振ったのが嘘だと思われたじゃない。せめて1ヶ月は落ち込みなさいよ』
理不尽だと思った。
…目の前に居るのは俺の好きな子、…だったハズだ。
なのに、何処が好きだったのかを必死で欠片を探しても見当たらない。
分からなく、なった。
俺はため息をついて、方向を変えると綾乃さんを振り返らずに、走り出した。
…綾乃さんの機嫌を取るより…
……実範さんをこのまま帰して、実範さんと気まずくなる方が嫌だって思えたんだ。
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