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『ううん。いいの』
…そう言った彼女が笑っていたのは、昨日の事。
買った花束と貰ったチューリップを抱えて帰宅した俺は、貰ったチューリップの水をかえるために裏庭の井戸でくんだ井戸水を花瓶に注いだ。
…メイド任せにせずに、最後まで自分で面倒を見ようと決めていた。
窓が開いた気配がして振り返ると、メイドのナタリーと目が合った。
『あら、まぁ。赤いチューリップ。婚約者のアデル様から頂いたのですか?』
…メイドの明るい声に、手元の赤いチューリップに目を落とす。
『何故、アデルだと?』
…怪訝な顔をした俺に、クスクスと笑うメイドに首を傾げる。
『男の人は、駄目ね。花言葉、知らないんですか?』
『…………花言葉?』
゛赤いチューリップの花言葉が何か知ってる?゛
……その瞬間、脳裏に昨日の彼女の言葉がよぎった。
『赤いチューリップの花言葉は…』
…その言葉の意味を聞き取った瞬間、俺は走り出した。
嬉しくて。…彼女に会いたくて。
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