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…きっと花屋に着いたら、彼女に貰ったチューリップのお返しに赤いチューリップの花を買って彼女に渡すと…
そう、決めてた。
……それなのに、花屋についた俺を待っていたのは厳しい現実だった。
『……あの、カミラは?』
……息を切らせて駆けつけた花屋には、異様な空気が漂っていた。
『…あの子は連れて行かれたよ。魔女だったんだ』
魔女は、魔女裁判にかけられ、ほとんどの者が殺される。
『…っ、そんな話はでっち上げだ』
…怒鳴って終わる話ではない。事実、彼女は魔女などではない。
『…あんたがそう思う気持ちもわかるよ。わしも長年雇っていて気付かなかったんだからね。でも、証人がいるんだよ』
『…証人って、誰だよ』
…その後、老人の口から紡ぎ出された証人の名前は…
俺のよく知る人物だった。
そう。
゛俺の婚約者は、花屋の少女カミラを魔女にしたてあげ、ついには死に追いやった。゛
これが、現実で悲惨な真実。
…やっと気持ちが通じた瞬間、俺は大切な人を無くした。
…着々と、婚姻に向けて準備が進む中。…俺は最後の悪あがきをする事にしする。
……もう枯れてしまった、彼女の分身を握りしめて。
はっ………。と覚醒した瞬間、嫌な汗が全身を流れた。
……嫌な夢を見たな。
しばらく、自室の天井を見たまま息を整えて…
…脳内を現実に戻しながら、ゆっくりと体を起こす。
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