夢と現実の狭間の答え。

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…色味を合わせて、また来てもらえるように安く豪華につくる。 「かすみそうはね?゛赤ちゃんの吐息゛と呼ばれるくらいだから、とても無垢な花よ。花言葉も…清い心、切なる願い」 「…澄んだ花だね。…曇りがなくて、とても綺麗」 …そう言って彼は、甘さを含んだ笑顔でふんわりと笑った。 この人には、婚約者がいる。 分かっている。 だけど、私は… “彼が好きだ。” …気付いたら、持っていた赤いチューリップの花を差し出していた。 精一杯の勇気で。 ちっぽけで、取るに足らない私の気持ちに気付いて欲しくて。 そう、気付いて欲しかっただけ。 …心底幸せそうに話す婚約者との未来を私ごときが奪えるなんて考えていない。 ただ、思い出の一部としてでも。 ……あなたの脳裏に残りたかった。 …けど、その後。私はそんな愚かな願いを願ってしまったための報いを受けた。 その時代、魔女狩りが流行っていた。 『…この、っ魔女』  魔女? …そうか、私は魔女だったのか。 だからこんなにも愚かな事をしてしまったんだ。 …連れて来られた場所が、最後の記憶。 劫火と木の杭。熱と焦げた匂い。 …最後に願ったのは、ただ一つ。 私に来世があるならば、きっと… お姫様のいる王子様は好きにならない。 …私は、お姫様にはなれない。 花を売る事しか出来ない、魔女にもなりきれない女なのだから。  
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