49人が本棚に入れています
本棚に追加
ニコニコと笑うゆずる君に根負けして、うつむいてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「…えと、お姫様」
そう言った私に、ゆずる君は目を丸くした。
「いつも見てる夢があるの。その夢で私は魔女だから、お姫様になりたくて。…昔から憧れてた」
「魔女?…どんな、夢?」
「…花を売ってる。よく通ってくれる人が居るんだけどね?
赤いチューリップを渡すの」
「え………」
「…最後は魔女だって言われて火炙り。…本当は、お姫様になりたかった。夢にこんなに影響されるなんて、本当に馬鹿らしいんだけど。何回も何回も繰り返し見ると…なんか、ね?」
…その言って顔を上げると、ゆずる君が目を見開いて固まっていた。
顔色が悪い。…どうしたんだろ?
「ゆずる、君?」
「…ねぇ、実範さん。かすみそうの花言葉、知ってる?」
…真剣なゆずる君の表情に、私は小さく頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!