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〈-ゆずるside-〉
…ただ興味本位で聞いたはずだった。
「…花を売ってる。よく通ってくれる人が居るんだけどね?
赤いチューリップを渡すの」
その夢には、聞き覚えがあった。
まるで昨日の俺の夢…。
「え………」
…こんな事ってあるのだろうか?
「…最後は魔女だって言われて火炙り。…本当は、お姫様になりたかった。夢にこんなに影響されるなんて、本当に馬鹿らしいんだけど。何回も何回も繰り返し見ると…なんか、ね?」
…そう言って苦笑する実範さんに、胸が痛む。
…まるで、胸の中のもう一人の俺が泣いているみたいに。
「ゆずる、君?」
…戸惑う実範さんに、確信にせまる質問を投げかける事にした。
まるで、重厚な扉を開けるように。
「…ねぇ、実範さん。かすみそうの花言葉、知ってる?」
…そんな俺の言葉に、実範さんは小さく頷いた。
「うん。…かすみそうはね゛赤ちゃんの吐息゛と呼ばれるくらいだからとても無垢な花だよ。花言葉も…清い心、切なる願い」
…その瞬間、涙がこぼれた。
その答えが、花言葉を教えてくれたカミラと殆ど同じ答えだったから。
…まるで、夢の中の少女が目の前にいるみたいで。
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