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そのときふいに風が吹いた。たぶん、それがすべての原因だ。
世の中にはそういうことがたくさんあって、僕一人の力ではどうにもできないことだって、山ほどある。
それって仕方のないことさ。
風がどこから吹くのかなんて僕の知ったことじゃない。それは光の届かない海の底なのかもしれないし、誰も知らない静かな洞窟なのかもしれない。そもそも特に決まった制限なんてものなどなくて、どこからでも吹くということもある。そんななか僕にできることといえば、風よどうか吹かないでくれと祈ってみることくらいだ。けれどこれは周知の事実で、流れ星に願うようなことはたいてい叶わない。だから僕の願い事なんてそれこそ、風にさらわれどこかへ消えてしまうのだろうけど、それでもいい。風にさらわれた僕の願いが誰かのもとに運ばれたりしてくれたら、僕はきっと嬉しい。流れ星は消えてしまうけど、風は消えないだろう。彼らはいつだって、どこでもないどこかをさまよっているのだから。
僕の話をしよう。
僕は大学二年生で、好きな女の子がいる。彼女は艶やかな黒髪を肩まで垂らし、前髪は眉の辺りで切りそろえていて、眼鏡をかけている。身長はとても低く、それに合わせ全体のパーツも小さくある。また僕たちは同い年で、たまに一緒にご飯を食べるくらいには仲が良い。
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