The evil that men do

12/31
前へ
/627ページ
次へ
「あら、セトミちゃん。おかえりなさい。今日は早かったですね」  そのバーのドアを開くと、カウンターで開店準備らしい作業をしていた若い女性が、立地にふさわしくないような上品な声で出迎えた。 「うん、アリサ。思ったより楽に仕事が片付いてさ。さっさと報酬もらって、帰ってきた」 「まあ、そうでしたの。でしたら、お腹減ってます? なにか食べるのなら、準備しますよ」  のんびりとした声に、優しげな顔。彼女――――アリサは、このバーのマスターであると同時に、この建物のオーナーでもある。居住区でも比較的、裕福な家の出である彼女は、親の遺産であるこのマンションを受け継いで、部屋の管理とバーの経営で生計を立てている。とはいっても、このマンションも三階から上はすでに崩壊しているのだが。
/627ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加