The evil that men do

14/31
前へ
/627ページ
次へ
 二階に上り、無機質なコンクリートの通路を歩けば、すぐにそこは自分の部屋だ。セトミは自室の鍵を取り出すと、その扉の中へと入る。  窓ガラスのひびや壁紙が一部破れているなど、多少荒れたところがあるものの、この辺りの基準で言えば十分きれいな、ワンルームタイプの部屋だ。薄汚れてはいるものの、家具も最低限は揃っている。用心棒代わりにあてがわれる部屋としては、上等だ。  後ろ手にドアを閉め、鍵とチェーンをかけてから、セトミは猫のように伸びをする。 「うーん……ぷはーっ」  やっと、一息という感じで息をつくと、セトミはパイプベッドに寝転がる。外では、マンションに戻ってくるまで気を張っていなければならないため、心の底から安心できるのは、自室のみと言っても良かった。  シャワーを浴びようかとも思ったが、横になってしまったら一気に眠気が襲ってくる。張り詰めていた糸が、一気に緩んだ感じだ。  まあ、いいか。どうせ、また起きたらバーの仕事に行かなければならないのだ。シャワーはそれからでも遅くない。  そう決めると、セトミの意識は落ちるように眠りの中へと消えていった。
/627ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加