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二階に上り、無機質なコンクリートの通路を歩けば、すぐにそこは自分の部屋だ。セトミは自室の鍵を取り出すと、その扉の中へと入る。
窓ガラスのひびや壁紙が一部破れているなど、多少荒れたところがあるものの、この辺りの基準で言えば十分きれいな、ワンルームタイプの部屋だ。薄汚れてはいるものの、家具も最低限は揃っている。用心棒代わりにあてがわれる部屋としては、上等だ。
後ろ手にドアを閉め、鍵とチェーンをかけてから、セトミは猫のように伸びをする。
「うーん……ぷはーっ」
やっと、一息という感じで息をつくと、セトミはパイプベッドに寝転がる。外では、マンションに戻ってくるまで気を張っていなければならないため、心の底から安心できるのは、自室のみと言っても良かった。
シャワーを浴びようかとも思ったが、横になってしまったら一気に眠気が襲ってくる。張り詰めていた糸が、一気に緩んだ感じだ。
まあ、いいか。どうせ、また起きたらバーの仕事に行かなければならないのだ。シャワーはそれからでも遅くない。
そう決めると、セトミの意識は落ちるように眠りの中へと消えていった。
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