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その視線の先を見ると、この界隈でも、いかにも柄の悪い風体の男たちが、早くも出来上がっている様子で酒を飲んでいる。見たことのない顔であることからして、はじめて来た客だろう。
「おい! 喰いもんはまだかよ! 早くしろや!」
「は、はい! 少々お待ちください!」
男たちの怒声に押され、震える手で作業をするアリサを見、セトミは大体の状況を把握する。同時に夕立の暗雲のごとく、嫌悪感が胸の中にむくむくと立ち上って行く。
「はーん、そういうこと」
一人ごちて、セトミはカウンター脇に椅子を置き、足を組んで座る。どうやら、そう時間が経たないうちに、自分の仕事がありそうだ。
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