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「いや、このままで、いい」
静まり返った店内に、その静かな声が響いた。男の表情が、いよいよもって怒りに震える。
一瞬、静寂。そして。
がちゃり、と男がセトミに狙いをつけた。その指が、トリガーを引こうと動き出す。
刹那、セトミの瞳が変わった。昼間、ヴィクティムにとどめを刺したときのように、まるで猫のように収縮し、紅く染まる。
同時に、彼女は駆ける。その神速をもって、一瞬で男のすぐ側まで肉薄する。駆ける速度に、いつも被っている魔女のような帽子が、落ちた。
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