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ちょっと頬に熱を持ち始めているから、早く歯医者に行かなくちゃいけないのはわかってる。
だけど今担当している仕事が大詰めで、きっと今日も残業決定。
「そうだけど、早く行かないと痛い目見るよ」
「もうかなり痛い……」
人が真面目に話しているのに、隣であぶらとり紙を額に押し当てながら、笑っている弥生に冷たい視線を送るも効果なし。
「私が行ってる歯医者、すぐ近くだから行ってみれば? 信号渡って向かいのビルの2階。女医さんだから安心して大口開けられるよ。人気があるから予約しないと無理かもしれないけど」
そう言う弥生は綺麗に手入れされた白い歯をきらりと光らせた。
さすが自分磨きに余念がない。
「ありがとう、心配してくれて。残業が早く終わったら行ってみる」
と言っても全然終わる気がしないけど。
「課長も心配してるし、早く治していつもの美鈴に戻ってよね」
課長が心配してる?
「そんなわけないじゃないの」
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