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もしも、荒木課長の部下として配属にならなければ、あの頃付き合っていた彼と結婚して、今頃子供を抱いていたかもしれない。
そんな将来を語りあったこともないわけじゃない。
だけどビックリするくらいあっけなく消えてしまったことは今でも忘れられない。
あれは入社してしばらくした頃、学生時代から付き合っていた彼の誕生日を祝う為に、初の有休を取ろうとしたのが事の発端だった。
給湯室でその頃はまだ5人いた同期の女の子たちと、そんな話で盛り上がっていたすぐ後、自分の席に戻るなり言い渡された出張。
「え? 私、ですか?」
「あぁ、いい機会だから同行しなさい」
「……はい」
手に持っていた有休届けはそのままゴミ箱行き。
それからというもの、クリスマス・バレンタイン・ホワイトデー・私の誕生日、ついでに彼の誕生日、笑えるくらい出張か残業で埋め尽くされた。
しかも彼と別れた後もそれは続いている。
別れたと報告したわけではないし、ましてや聞かれもしない。
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