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私は慌てて身体を起こし
立ち上がった。
服は半分、紅く染まり
顔からも血が垂れる。
腕で顔についた血を
軽く拭い、私は死体から
離れるべく、階段へと
数歩進んだ。
災難も災難だ。
あいにく血が口に
入ることは無かった。
私は人の血など飲む気なんてない。
だが身体中、血だらけで
気持ち悪い状態になって
しまった。
私は家に戻って服を
替えることを考えたが、
また死体を通り抜けることは
嫌だったため、
断念せざるおえなかった。
私は嫌な感触を
振り切るように、
階段へと駆けていった。
「落ち着いて。」
私は私に言う。
階段を一気に降りて
私はため息をついた。
辺りは人気(ひとけ)がなく、
静まりかえっている。
不気味さを感じるくらいだ。
いや……
死体を見つけた時点で
充分不気味な場所だが。
私は今、記憶が
限りなく中途半端だ。
ここがどこか、
また周りに何があるかすら
覚えていない。
私はとりあえず
マンション沿いにある
車道へと足を動かす。
どうして人がいないのか。
いや、もとより人が
少なそうな道だった。
車道といえど、
車一台が通れるぐらいの
道で、それ以外の大半は
田んぼが広がっている。
道沿いには何かの
建物が数件と、
家もある。
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