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扉に手をかける。
その時だった。
ブーブー
小さな机の上で突如
鳴り響くバイブ音。
その音で私は動きを止めた。
視線を机に向け、
正体を見る。
今だに鳴り響き続ける
それに私は慌てて
駆け寄った。
携帯……のようなものだ。
電話のようで
画面には永田と表示されていた。
おそらく通話ボタンで
あろう物を押すと、
声が鳴り響いた。
「あっ!通じた!
無事だったんだね!
今、どこだい?
怪我はないか?」
まくし立てるように
電話口から低いおじさん声を
出す永田。
「あの……
とりあえず、
落ち着いてください。」
私は静かに言葉を返す。
焦っている理由が不明なのだ。
不安だけを煽られても困る。
「あ、あぁ。
君は状況を分かっているかい?」
永田はいったん落ち着いた
ようで、しばらく考えてから
言葉を紡いだ。
状況?
状況どころか、記憶すら
ない状態だ。
私は私のことすら
思い出せない。
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