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「北の領域には敵の重騎士も少ないと聞く。ここで全滅を待つよりは、どうだろう、まだ動ける者が全員して姫様を落ち延びさせるというのは?」
額に包帯を巻いたの男の問い掛けに、答える者はいない。
白髭の騎士の骸は、白服の衛生兵2人が担ぐ木の板に乗せられて兵溜まりの間から消えた。
「先導師を頼るしかないよ‥‥ガー・フェルエル‥‥だって、まともに動ける兵なんて、お城にはもう居ないんだよ」
窓際でうずくまる若い騎士に小声で囁いたのは、赤い巻き毛の子供である。
戦塵で汚れてはいるが、若い騎士の鎧は白を基調に赤や青の花の絵が描かれた鮮やかな物。
近衛兵団所属の証である。
「先導師は闇の中で生きていると聞く。ロウ、それに姫様を託すのはどんなものだろう?」
澄んだ褐色の瞳を持つ青年。
兵溜まりの間の中で、唯一諦めの色が無い瞳である。
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