そこに在る花

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花は奢りを知りません。 花は自分の美しさを誇ることがありません。 その美しさに惹かれた者からどれほど賛美の言葉を贈られようとも。 花はなんら変わることなく、ただ花であり続けます。 もし花が自分の美しさを自覚し、今以上の美しさを手に入れようという自意識が芽生え、そのための行動を始めたならば。 花に心を惹かれる者は次第にいなくなるのでしょう。 花はただ自分は花という存在であると知っています。 でも花にとってはそれ以上でもそれ以下でもありません。 花は無垢の魂です。 だからどんなに荒んで暗黒に染まった心の持ち主であろうとも、花はなにも語らずその者の傍に寄り添います。 花はただ花であり続けるだけなのです。 でも一つだけ。 たった一つだけ花も初めて知ることがありました。 枯れ果てた心の者に寄り添ううちに、花はやがて一粒の種子をその者の心に落としました。 するとその者はいつか私も花になろうと心に蕾を抱きました。 花は自分がただ花という存在であり続けた意義に気づいて、それを無上の悦びに思いました。 花はますます花であり続けます。 あなたの心へ花束を届ける悦びを知った花は。 未来永劫、美しい花を咲かせ続けるために。 今日もただ花という存在を精一杯生きるのです。
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