第一章 酒口の凶行

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            1    千葉北警察署刑事、酒口 孝也は連行してきた容疑者のこめかみに拳銃を突き付ける。  彼は、現職の刑事である。  そのような事をすれば、どのような事になるのか。彼が千葉県内の刑事の中で、最も刑事に不適合者であっても分かりそうなもの。  しかし、実際に行っている。  しかも、目に涙を浮かべて。 「すいません。僕を、引きとめないでください。止めるなら、この男を射殺しますよ」 「おいっ、酒口。お前、自分で何をやっているのか、分かってるのか」 「分かってますよ。でも、こうするしかないんです北さん」  北さんと呼ばれたのは、千葉北署刑事課の係長。同署の名物刑事、「ヤジキタ」の北方係長である。  彼の背後には、その相棒の矢次刑事が控えている。  北方と矢次で、「ヤジキタ」である。  そんな二人の横を通り抜け、酒口は刑事課の前を通り過ぎ、一階への階段を目指す。  騒動を聞き付け、署員が集まってくるが誰も彼を止められなかった。  そして酒口は、北署からの脱出に成功する。
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