捜索要求 【酔いどれ刑事の事件簿 七】

第一章 酒口の凶行

　
　そもそも、何故このような事になったのか。

　それは、一時間前。同署に、１１０番通報が入った事から始まった。

　通報が入ったからと言って、それが必ずしも事件へとつながるものでは無い。

　近年、消防署への１１９番通報のイタズラや、消防車をタクシーのように使う人間が問題視されている。

　１１０番通報も、１１９番通報ほどでは無いにしろ、そうした問題がある。

　事件と誤認しての通報ならまだいい。

　隣家の夫婦喧嘩を聞き付け、通報してくる場合がある。

　その考え自体には問題は無い。

　それが、ＤＶドメスティックバイオレンスなどの暴力行為で、夫婦のどちらかに命の危険があるなら。殺人や障害事件となってしまう。

　しかし、そこは夫婦の間の事。

　警察には、民事不介入という原則がある。

　単なる夫婦喧嘩には、警察が介入しないというもの。夫婦間の口喧嘩に、いちいち警察官がその強制力を行使しないのである。

　当事者としても、ただの夫婦喧嘩に警察から口を挟まれたくないだろう。