第一話 雨の散歩道

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土田はカメラのレンズを閉じ、カバンにかたずける。 「優さんは、どんな花がお好きですか」 突然の質問に困惑する。 普段から聞く側の優には、予想外のことだ。 「バラ」 思わず口にでた。 「そうですか。いい花ですね。では、どんな品種がお好みですか」 頭の中が真っ白になる。 「色は赤が好みですか。大きさは小ぶりが好みですか。棘は大きめが好みですか」 「ごめんなさい。バラの事何も知らないんです」 優の表情を楽しんでいるようだ。 にこやかな笑顔を見せる土田からは、悪戯っ子がみせる遊びがあった。 「そうでしょうな。私の質問に答えられるのは、専門家か愛好家ぐらいでしょう。でも、バラは好きなのですね」 黙ったまま頷く優。 「そうゆうことです。私が写真を始めたきっかけは、そうゆうことです」 「好きだから」 「ええ、とっても」 気力をなくしたように表情が重くなる。 メモを握る手が、力を失う。 「時間もありますので、少し散歩しませんか」
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