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第二話 水あめ屋の猿
こんな屋台を見たのは初めてだ。
売っているのは水あめなのだが、作っているのは猿だった。
「へい!いらっしゃい」
店には人がちゃんといる。少し小柄な中年男だ。
猿は首から白いマントのような衣装を身につけ、カウンターの端に腰掛けている。
右手には、水あめを混ぜる道具が握られている。
しかし、何か不自然だ。
店の男の視線が気になるが、猿の事が気になる。
「お客さん!こいつは見せ物じゃないんですよ」
少し苛立った口調。
猿がこちらに視線を向けた瞬間、全てがわかった。
この猿には、左腕と両足がなかったのだ。
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