第1霊:あぁ、儚き蝉時雨

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そんなブルーな状態の獣耳少女の服から、ふいに聞き慣れないセンスなど皆無な着信音が鳴り響く。 彼女はその音を耳にするなり、ビクリ!と小さな肩を大きく揺らす。 それから暫く黙り込んでから、 「……世の中には居留守という言葉もあるくらいだし、一回くらいならそんなズルいこともしてもいいっちゃよね~…」  「良いわけないでしょうが、いぬいっちゃん」  急に、彼女の言い分を全却下する新しい声が高層ビルの屋上の涼しい空気にのって、獣耳少女の耳に入り込む。 その声色は喜怒哀楽という感情全てを、境目無しにゴチャゴチャに混ぜ込んだような不可思議なものだった。 その声を聞くなり獣耳少女は姿勢をビシッと正して、声のした方に体をむける。 そこにいたのは、“人畜無害”と真ん中に大きくプリントされた日本にきた外国人観光客が良く意味も知らずに買っては着込んでいそうなTシャツを恥ずかしげもなく着ている1人の長身の男。 金髪の頭には本来の使い道を無視するように高級ブランドのサングラスがのせられていて、左頬に刻まれた炎の形をしたタトゥーがよりいっそう男の存在をミステリアスに仕立て上げている。
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