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何をっ!と、僕が睨みを利かせている人物は先程のメールの送り主、鈴梨 仄だ。
髪は染めてはいない天然物、つまりは自前の茶髪で長さは肩にふれるかふれないかといったくらいで、いつもつけている矢印の形をした髪飾りが特徴的だった。
彼女は僕の通っていた中学の一年後輩で、僕からテニス部の部長の座を受け渡された部活の後輩でもある。
ついでに同じ塾に通っていたりと何かと一緒になることが多く、僕が高校にあがってからも、それはさも当然のように続いていた。
僕としても、彼女とは仲が悪いわけではないので、こういった交流も気分が乗っていたら行うようにはしている。
その大半がテニスの練習相手というのだから、高校は帰宅部な僕にとっては実は良い運動相手だったりする。
「アンタは何でいつもいつも、こう時間通りに来ないのよ」
「悪気はない。故に我あり」
「そんな腐れ名言を聞きたくて呼んだ訳じゃないわよ。っていうか面白くもなんともないし。取りあえず死ねばいいと思う」
「たった一言でそこまで言われるとは思わなかったよ!?」
僕はワナワナしながらも、足下に転がっている先程投げつけられたテニスボールを拾い上げ、それを優しく鈴梨に投げ返す。
「人に物を投げるときはこれくらいの優しさでだ。分かったか、中学生?」
「当たり前の知識を教えてくれてありがとうございます、高校生」
鈴梨は意地の悪い笑顔を浮かべて、そう言った。
この長々と話題を引っ張らない竹を割ったようなサッパリとした性格が、説教臭い僕とは相性がいいというのだから、驚きだ。
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