第1霊:あぁ、儚き蝉時雨

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___________ ________ シュバッ!!と、建物の屋上を次々と飛んでいく1つの影があった。 それは、とんでもない跳躍力と瞬発力をそなえているらしく、一般人ではその姿を事細かに観察できるものはまずいないだろう。 時刻は日が暮れ始めた午後6時前後。 外には会社帰りのサラリーマンやOL、遊び帰りの学生達で溢れかえっていたが、しかし誰もそれを目にすることができなかった。 だからこそ、建物の下には大勢の人が行き交っているのに大騒ぎにはならないのだ。 そんな高速で跳び回っている何かは、ふいにスタりと全く重力を感じさせない動きで、一際大きな高層ビルの屋上で、その動きを止める。 フワリと着地したのは1人の少女だ。 着ているのは巫女のような服なのだが、そこに使われている色が青と黄というあたり、和服なのにも関わらずどこか西洋風な印象を与えている。 顔立ちは綺麗に整っており、艶のある水色のショートヘアーが特徴的だった。 そして、何よりも目を引きつけたのはその頭のてっぺんにピョコリと出ている2つの獣耳だろう。 しかも、それは単なる飾りとかではなく明らかに彼女の体の一部として備わっていた。   いうなれば、それが彼女にとっての耳だった。 それらを総合すると一種のコスプレにも見えなくないその格好は、しかし獣耳を携える彼女にとっては正装だったりする。
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