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いろんな意味をこめて、とてつもなく周りから浮いている獣耳少女は、しかしそんなことなど気にもとめないようで(そもそも見られていないのだから当然な事なのだが……)、自分がいる高層ビルの屋上から身を乗り出すようにして周りを見渡す。
彼女は頭についている特徴的といえば、あまりにも特徴的すぎる水色の毛に包まれた獣耳をピクピクと可愛らしく動かしながら、鼻をひくつかせる。
その行動はさながら、匂いの原因を探り当てようとしている警察犬を連想させる。
さて、獣耳少女は散々辺りをクンクン嗅ぎまくった後、なんだか納得がいかないといった感じで首を左右に小さく振り、乗り出していた小柄な体を引っ込める
「うがぁ~~……っ。わっちとしたことが奴(やっこ)さんを逃しちまったっちゃ~…」
その場にペタリと座り込んだ少女は都会である東京では先ず聞かないであろう話し方で、誰に言っているわけでもないのに無駄に大きな声量で、独り言をいった。
それを境につい先ほどまで素早く動き回っていた少女は自身の特徴でもある獣耳をフニャリと力なさげに折って、しばらくその場でうなだれていた。
というのも、己に課せられた仕事が失敗に終わってしまったからだ。
「ふぬ~……これはご主人に何て言い訳をしようか、本格的に悩まないといけないパターンっちゃかね~?」
言って獣耳少女は深くため息をはく。
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