第3霊:僅かな現実味、極度な異常さ

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結局は、どこまでいってもくだらない事の積み重ねが原因だった。 とある1つの特別な瞬間があったのではない。 最悪の結末へ向かうレールのようなものは、昔からチラホラとは見えてはいたのだ。 僕が知る由もないが、裏側の世界に身を浸している不才という男は語った。 主人公という存在は、もはや名ばかりのものとなりつつある。   長い間、人々が思っていた“主人公はその身を呈して皆を救ってくれる”という普遍的なものは既に崩壊していると。 主人公という大それた存在は年月の経過と共に、その価値を皮肉にも主人公自身によって下げられていったのだ。 その結果、今の主人公は名前すら覚えなくても良い脇役レベルの存在になり、中には悪の道こそが新時代ともいう平和など何のその。 とにかく自分という存在が際だつためなら何をしても許されるという非常に混沌とした環境を築きつつある。 この状態が続いていけば、やがて脇役にまで成り下がった主人公は人々に忌み嫌われる存在となり、主人公というだけで嘲られ、罵られ、自分が望んだにもかかわらず主人公という自分の立場を隠していかなくてはならない時代がくることだろう。 そして、最終的なその末路を決して望んで迎えてみたいとは誰1人とて思わないだろう。
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