第3霊:僅かな現実味、極度な異常さ

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それは当然ながら鈴梨にも適用されており、彼女が寝食を共にしている学生寮の一室には、もう1人の少女がいた。 ショートヘアーというには、ちょっと長めの髪の毛を可愛らしいデザインのシュシュを使ってサイドテールにした、活発そうな鈴梨とは真逆に、おっとりしている少女。 彼女の名前は、粟実 夕(あわみ ゆう)。 鈴梨と同じ東黒中学(あづまくろちゅうがく)に通うクラスメイトであり、読書を好む彼女は風呂上がりなのだろう、パジャマ姿でドライヤーを用いて髪の毛を乾かしている。 粟実は帰ってきたルームメイトの方は見ずに、適当に反応を返す。 「おかえり、仄ちゃん」 「あいよー、今帰りましたよっと」   鈴梨は肩に担いでいたラケットバックを入り口近くに立てかけ、部屋の隅に設置されている小型の冷蔵庫からジュースを一本取り出す。 「ジュースなら、私のも取っといて~」 未だに視線を鏡に向けてはドライヤー片手に格闘している粟実は、ついでとばかりに鈴梨に飲み物のオーダーをする。   対して鈴梨は、イェスともノーとも分からない曖昧な返事をして、もう一本ジュースを取り出す。 冷蔵庫から放たれる冷気を暫し気持ちよさげに受けていた鈴梨は、やがてドライヤーの音が止んだのに気がつく。
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