第3霊:僅かな現実味、極度な異常さ

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「さて、本題にはいる前に君にいくつか質問したいことがある」 不才はポケットから取り出したヨレヨレのケースからタバコを一本取りだし、それを口に挟む。 「君は自分をどう思っているんだい?」 予想だにしていなかった質問だった。 妹に電話をしていた時に、ふと思った事に類似していた内容だった。 自分をどう思っているのか? この質問の真髄は別のところにある。 つまり。 「僕の本来あるべき立ち位置……」 「その通り。いやぁ、やっぱり君は普通の人なんかよりも頭が柔らかいね~。話しがいがあるってもんだよ」 不才は取り出したライターで口に挟めたタバコに火をつけ、発生した煙を吸い込む。 次に不才が口を開けた時には、灰色の不健康そうな煙が不気味に漂った。 「さっきも言ったけど、僕の知りうる限り実際に被害にあったのは君だけだ」 発せられる言葉一つ一つが。 「その大半が僕たちが被害に遭う前に先に対処してきたからだけど」 明確に、だが確実に。 「残りの少数は身の危険を直ぐ様感じ取って、逃げたからだ」 所有者である僕でさえハッキリと理解できていない心に。 「じゃあ、なんで君は逃げなかったんだい?」 明確な輪郭を浮き彫りのように与えていく。
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