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「君は実は心の何処かではこう思っていたんじゃないか?」
にたり、と。
皮肉と笑いの意を込めた微笑を浮かべ、しかし不才は語る。
僕の知らない僕の本質を。
僕が知らぬ間に抱いていた僕という理想像を。
「僕は今までいろいろな人達を救ってきた。となると、もしかしたらこれはテレビの向こう側で活躍している主人公たちと同じ運命を辿っているんじゃないか?」
まるで、僕の心が思っていたことを代弁するかのように、不才はまるで演劇の決まりきったセリフを読む役者さながら滑らかに、その口を動かす。
僕自身ではなく、今日会ったばかりのサングラス男が。
しかし、止められない。
否定することができない。
ソレはすなわち、間違っていない事実だからとでも言うつもりなのか。
「そこで、君はこう思っていたんじゃないか?“僕を主人公にしてくれる状況がセッティングされてはくれないか”……ってね」
今まで僕が人助けをしてきたのは、自分がやらなければいけないという状況に知らぬ間にセッティングされていたからだ。
となれば……。
「そして君の望み通り、こうして状況はセッテングされた」
口から吐き出す煙は更に色味をましているかのようだった。
不才は一度、口に挟んだタバコを手で持ち上げてから、自分の見解を呟く。
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