恋した瞬間

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けれど前島さんとは それっきりパートナーを 組む事はなかった。 新人である彼女は 新規の案件を担当するたびに 冬木部長からの指示で 他のデザイナーとも 順番にパートナーを 組まされて行く。 言わば顔見せ的な感じで このローリング方法で 自分と一番相性の合う パートナーを見つけるのも プランナーとして大切な事だ。 しかしこれをきっかけに 彼女のファンクラブは ますます増殖して行った。 さすがに何か行動を起こして 自分のものにしないと ヤバいかなと感じてはいても 俺はまだ行動を起こせずにいる。 その理由は、今付き合ってる女… 総務課で働いている 真田京香との別れ話が こじれていたから。 香港から本社に戻って すぐの頃に告られて なんとなく付き合い始めて しまったんだけれど いざ別れたいと言っても なかなか彼女は 納得してくれなくて。 …時間だけが過ぎて行く。 そんなある日の事だった。 ふと見つめた前島さんの表情が 何やらえらく落ち込んでいて 冬木部長までが厳しい表情を 浮かべて前島さんに何か 言っている。 デザイン課とプランニング課の 間には仕切りのガラスがあるだけに 二人が何を会話しているのかなんて こっちまで聞こえて来ないんだけど どう見ても…何かミスをしたような そんな雰囲気を感じて 無性に彼女が心配になった。
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