恋した瞬間

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「前島さんと俺が請けてる案件が どうもクレーマーみたいで 完成視察でイメージが違うなんて 言われてさぁ… ふざけんなって感じだよ。 工期中だって視察に来てたんだぜ あのクライアント」 同じデザイナーの三田が 俺にぼやいた言葉で 彼女が落ち込んでる 理由は分かったけど。 「ひどいなそのクライアント。 だけどどうなるんだその案件?」 「まぁ冬木部長がこれから 前島さんと一緒に行って 交渉するってさ」 「そっか…。 まぁ冬木部長が行けば 何とかなるだろ」 冬木部長ならきっと彼女を 守ってくれるだろう。 そう思って俺はあえてこの時 彼女には接触しなかった。 まさかこれをきっかけに 冬木部長と彼女が不倫関係に なってしまうなんて 想像もしてなかったから。 それに気づいたのは… 明らかに彼女が冬木部長に 向ける瞳に変化が見えた 2年目の冬だった。 仕事中でも時々冬木部長は 新規案件の打ち合わせのふりをして 前島さんを会議室に連れて行く。 だけど、普段は第一会議室なのに 前島さんを連れて行く時だけは 第二会議室。 おそらく… 第二会議室の奥にある資料室が あの二人の密会場所。
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