Prologue

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   幼子は、吹き抜ける冷たい風が頭上の木の葉をカサカサと鳴らしていくのを聞いて、思わず顔を上げる。  乾いた葉はいずれこの風に乗って飛ばされていくものだということは、絵本にそう書いてあったのを読んだ為知っていた。  木はここにこうしてずっと立っているだけなのに、葉や花をつけたりそれを落としたりする。  動かずにどうやって命の循環を行っているのか、幼子には全く理解できない事象だった。  幼子は自分の手を握る母の手を見る。家事で荒れた手は、かさかさだ。  それを可哀想に思い、幼子は母の手を更に強く握り締める。  ──多分、この後自分は捨てられるのだ。 .
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