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「学者や芸術家の言い訳は、いつの時代もそういうもんだ。他者の為だと。本当は善悪の区別もなく、自分の中の高まりに抗えないだけなのに」
「違う!」
「何が違う? 自分の愉悦に没頭したことなど一瞬たりともなかったと……お前は、地獄の門の前でもそれが言えるのか」
「じ……」
今はその言葉が絵空事には聞こえなかった。
男のジャケットの内ポケットから、煙草のソフトケースがスルリと抜け落ちた。足元にバラバラと散らばる煙草を、もう気にすることさえ出来ない。
「……お前が持ち出した“種”はどこだ」
「し、知らん! 俺は、持ち出してなんかいない!」
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