Prologue

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  「知らない筈がない。壺がひとつ、消えていた。あの時持ち出すことが出来たのは、お前だけだ」 「知らんと言ったら知らん!」 「いいだろう。なら」  影が、すう……と腕を持ち上げる。ダラリと伸ばされた腕。その指先は、真っすぐに男の心臓を指し示していた。  男は訝しげに眉根を寄せる。 「お前、まさか……」 「ご明察」  影が人差し指をくるん、と軽く優雅な動きで舞わせると、男はヒッと声を漏らした。  恐怖や緊張の為ではない。男はそのまま自分の喉をかきむしるように何度も爪を立て、そして胸を押さえて呻き始めた。 「あ、あがが……」 .
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