2013年 初夏 【日嗣のぞみ】

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  ──────  信州にあるという零斗の実家は、聞けばかなりの旧家という話だった。  のぞみはそれを聞いただけでまた緊張してきたのだが、それを吹き飛ばすような話が出てきた。  昨今当たり前になっている、ブラウザ上で世界中を歩けるという立体写真の地図──そういうものに、零斗の生家のある村は載っていないという。  のぞみはそれを聞いて驚いたが、「地元の人間には、ちょっと自慢したくなるような小ネタなんだよ」と零斗は語った。  零斗にその話を聞いてから、のぞみは学校のパソコンで彼の出身地である寒村のことを色々調べてみたが、地図どころか何も出てこなかった。  ──鬼首哭(きくなき)村。  今までで聞いたことのない名前に、のぞみは一瞬字が浮かばなかった。  それを言うと、近くにある「鬼無里」の方がどうしても有名なのだと零斗は笑った。  そちらも以前は村だったらしいのだが、合併で今は鬼無里地区となっているそうだ。 .
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